“倹”のその先に“慈”がある-書・刻・雑言<13>

2015年2月21日

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「先ずよしと足でおし出すたんぽかな」(小林一茶)

湯たんぽが売れているそうで、我が家にも1個登場。朝、押し出されたものを拾い上げて「よくこれで顔を洗ったなあ」と思い出す。

でも、ちょっとめんどうだと思ってしまう。重い。袋から出さなきゃ、堅い栓をひねって洗面器に注ぐ。

しばれる北海道の早朝、いつくしむようにたんぽの湯を両手のひらに掬い上げた気持ちは今はもう消えている。

前夜、家族の人数分だけ湯たんぽを並べて石炭ストーブで沸いた熱湯を注ぎ込む母の姿は儀式のようだった。

”倹”もったいないのその先に、”慈”いつくしむ、があるのだろう。少々手間ひまかかるけれど。

◇いつくしむ=大切にする。かわいがる。愛する。
◇書=かな、連綿を用いて、おだやかに。
◇印=「一に曰く慈、二に曰く倹」。「老子」第67章より。「私は宝物を持っているよ。その一は愛すること、その二は倹約することさ」

フジサンケイビジネスアイ2008年02月19日