さあ帰ろう、真の自分に-書・刻・雑言<23>

2015年3月11日

23_sankei_20080513

「舟は遥遥(ようよう)として軽く颺(あが)り 風は飄飄(ひょうひょう)として衣を吹く」

寒風を帆に満たし舟は川面を滑る。”さあ帰ろう”古里へ、真の自分に帰るのだ。舳先に立つ男の微笑み。

官を辞して後この男は「力耕、吾を欺かず」と畑仕事に汗を流し「紙筆を好まぬ」不勉強な息子達を嘆きながらも「悠然と」山を愛で「歓然と」酒を、人を愛して生きた。

幸福とは何か分からない。しかし理想像のひとつがここにある。

◇舟遥々 風飄飄 陶淵明 帰去来の辞より
◇書=のびやかに
◇印=閑飲自歓然(しずかに飲みかわして楽しく)陶淵明の句

フジサンケイビジネスアイ2008年05月13日