法則なし「遊んでやがる!」-書・刻・雑言<10>

2015年2月15日

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「瓦當(当)」にもう一回だけおつきあいを。

漢代の作例「永く、久しく、楽しき哉、家」を模してみる。2000年もの昔、楽しい瓦に囲まれた家を夢想する。と同時に、その文字の配置、デザインの妙に驚嘆してしまう。

90度の扇形。その中での文字の変化を分類してみたことがある。正体、湾曲、回転。同心円で外向き、内向き。それらの複合されたもの…。一定の法則がない。千変万化、分類不能か…。

ふと気づく、「こいつら、遊んでやがる!」。

作例の「永」はクラゲのように漂う。「久」はガニ股で酔っぱらう。「楽」はあくびをし「哉」は深呼吸。「家」が中心で笑っている。

水が方円の器に随う如く、限られた空間にあっても創意と工夫でもっと自由に、などと教訓めいたことは言うまい。

太古の名もなき陶工、瓦職人。融通無碍ともいえるその熟達、自在な文字のあそびに見惚れることにしよう。

◇永く、久しく、楽しき哉、家=ずっとしあわせな家でありますように。
◇瓦當(当)=屋根の軒先に葺く丸瓦。その先端部の円内の文字が「瓦当文」
◇書=漢代瓦当文の模刻 石膏版に刻字し、拓本に採った(原刻は”長久”としているが”永”を用いた)。
◇印=「融通無碍」の「無碍」さわりのないこと。臨機応変、自在の境地。ガリガリとした感じで白文陰刻に。

フジサンケイビジネスアイ2008年01月15日